文を敲く

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一般人向け雑談入門  - 「なぜ、この人と話をすると楽になるのか」

自称「コミュ障」だった著者によるコミュニケーション入門の本である*1。著者はコミュ障を「見知らぬ人との雑談・世間話が苦手な人」と定義し、雑談のノウハウを紹介している。なお本書のノウハウが通用するのは相手が常識人の場合に限られる。また人数が3人以上になると「コミュ障」は会話の輪から取り残されて置石と化すが、その方策はあまり書かれていない。

雑談は他人に対して興味を持つことが大切だという。他人に興味を持つことで会話の糸口となる「質問」することができるのだ。そのため中程度から重度の「コミュ障」だと質問に思い悩む以前の「他人に興味を持つ」というところで壁にぶつかる。そもそも「他人に興味を持たなければならない理由」が分からないからだ。

最近読んだ「承認をめぐる病」によれば、「コミュ障」が生まれたのはこの手の雑談のハードルが近年高まっていることが背景にあるそうだ。あくまで「コミュ障」の自助努力に任せ、雑談のハードルを下げようという呼びかけにならない著者の態度は誠に現代的である*2

*1:本書は単行本だが、もし新書として出されていたら「武器としてのコミュニケーション」という書名で星海社から出版されていただろう。

*2:そもそも著者は「コミュニケーション」について「敵と味方を峻別する機能がある」「コミュニケーションをとることができない人は敵」「敵は殺してもよい」などと説明している。コミュニケーションを怠る人間はいじめて殺してもよいと言っているようなものだ。