文を敲く

読書記録とその他雑記。2018年11月に「はてなダイアリー」から移転してきました。

新語としての「上から目線」の考察

インターネット上で「上から目線」という言葉を見かけない日はない。しかし十年ぐらい前にはこのような言葉はほとんど使われていなかったはずだ。いつの間にか定着していたのだ。試しにGoogleトレンドで「上から目線」で検索してみると、2008年3月から突如として注目を浴び始めたことがわかる。

「上から目線」はウェブ上ではいつごろから使われ始めたのだろうか。2007年3月27日に書かれた「上から目線」という名の劣等感ゲームでは「「上から目線」という批判的なフレーズは、一時期の非モテ界隈あたりではよくみかけたものである」と指摘されている。非モテ界隈が盛り上がった時期を私は正確には把握していないが、2005年前後だろう。

2004年頃TBSで放映されていた「風になる」という番組の紹介記事では「上から見下ろす目線ではなく、同じ高さの目線で、共感を持って「応援」してくれる人を探した。」とあり、まだ「上から目線」という言葉が生成されていなかったことがわかる。「上から見下ろす目線」が省略されて「上から目線」になったのだろう。

現存する「上から目線」のおそらくもっとも早い使用例は2005年2月2日に書かれたブログの記事だ。以下に使用箇所を引用する。

 また、気になったのが「帰化」という言葉の意味ですね。「帰化」というのは、そもそも「未開の国の人が、文明国に帰順する」ということなんだそうです。それで、さきほど手元の国語辞典(集英社)で確認したところ、「もと、君主の徳に感化されて帰服する意」だとのこと。「帰順」「帰服」という言葉が聞き慣れないので、引き続き辞典でひいてみると、どちらも「抵抗をやめて服従すること」なんだそうです。いずれにせよ、「上から目線」の言葉みたいですね。
 だからといって「上から目線の差別用語だから使うな!」なんて硬直したことを言う気もございませんが。そんな偉そうなことを口走る行為そのものが「上から目線」ですからね。

「帰化」は差別用語?: 法 治 国 家 つ ま み ぐ い

ここでは「帰化」という言葉を使用する日本政府とおそらくリベラルな知識人としての著者自身に対して「上から目線」が使用されていることがわかる。また括弧つきで使用されていることからその時点ではまだ世間に広まった言葉ではないこといえる。

2006年7月18日にはYahoo知恵袋に「どうしてテストの質問文は「〜を答えなさい。」とか「〜を答えよ。」って上から目線なんですか」という質問が投稿されている。すでに学生でも気軽に使用する言葉となっていることがわかる。2ちゃんねるなどの掲示板やチャットでも一定程度使われてものだと推測される。

そして2006年11月8日にはネット上で屈指のアクセス数を誇る老舗ウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」の「おとなの小論文教室。」で「上から目線」が使用される。間髪を置かず2006年11月21には「ほぼ不定期刊眉唾記」で「上から目線」という記事が投稿され「最近、ブログのコメント欄や、はてなブックマークのコメントに対する反応として、「上からの目線で不愉快」という趣旨のものを度々見かける。」と指摘がされている。この時点でアーリーアダプターの間でおおむね定着していたといえるだろう。

なぜ突如「上から目線」が検索されたのかはわからなった。2008年3月に何が起きたのか。