文を敲く

読書記録とその他雑記。

暗渠 - 「愛と憎しみの新宿」

愛と憎しみの新宿 半径一キロの日本近代史 (ちくま新書)

愛と憎しみの新宿 半径一キロの日本近代史 (ちくま新書)

新宿の洗濯屋に生まれ、現在も新宿に住み続ける著者が綴った「新宿」という街のエッセイである。街の思い出について書いたエッセイは浮足立ったものも少なくないが、本書は「ネズミ」の視点から書かれており、街の明るい面よりは澱みを見るのが好きな人には面白く読めると思われる。

著者が愛してやまない新宿だが、二度目のオリンピックに向けて着々と暗渠化が進んでいるはずだ。欲望に蓋をして暗渠化しているのだ。とはいえ東京都の重心は今は東の方へと傾きつつある流れらしい。欲望の町としての「輝き」を保つことは難しそうだ。