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私小説の意義 - 「私小説のすすめ」

私小説のすすめ (平凡社新書)

私小説のすすめ (平凡社新書)

日本の私小説のダメさ加減を指摘した本や論考は多いが、本書のような私小説を擁護したものはほとんど存在しない。大塚英志など私小説批判者への反論に多くの紙幅が割かれているので「<私小説批判>批判」といってもいい内容だ。とはいえ私小説でもあまりにワンパターンな「妊娠小説」までは擁護していなかったが。

私小説のダメさの典型例としてよく挙げられる「蒲団」だが、著者によればそもそも現代にいたるまで読み継がれているということだけで価値は高いという。確かに100年間延々と批判され続ける小説というのもよくよく考えてみるとただ事ではない。