文を敲く

読書記録とその他雑記。

近代の終わり - 「精神の危機 他15篇」

精神の危機 他15篇 (岩波文庫)

精神の危機 他15篇 (岩波文庫)

ヨーロッパが第一次世界大戦を契機にゆるやかに没落へと歩み始めたことを指摘した表題作ほか各種の評論が収められている。著者が示した「欧州の没落」「近代の没落」「知性の没落」はいずれも現代では常識となっているため、新味は少ない。だが本文のそこかしこにフランスの知識人のエスプリが感じられるので読む愉しみは味わえるはずだ。

閑話休題。著者のような「進歩」への懐疑を示す知識人は今の日本ではあまり支持を得られなくなってしまった。世間は理想を伴わないポジティブ・イデオロギーで染まりつつあるからだ。