文を敲く

読書記録とその他雑記。

書き言葉 - 「日本語が亡びるとき」

日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で

日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で

2008年に刊行され読書人の間で話題となった本である。内容も示唆に富んでいるが、私が惹かれたのは文章自体の美しさである。若き日から円本(!)を愛読し、「明暗」の続編で文壇に登場したという稀有な経歴がなせる芳醇な書き言葉だ。だが果たしてこれから先、本書のような芳醇な書き言葉で綴られた文章をどれだけ読むことが出来るだろうか。本書を読んだ結論から言えば多くを期待することは出来ないと言わざるを得ない。

本書によれば日本社会は日本語を蔑ろにしているという。確かに国語の授業は文章の書き方を教えない。教師が忙しすぎるのだ。その結果、学生は文面が少し長いメールを送る場合「長文乱文失礼しました」と末尾に添えるようになったに違いない。普段はタイムラインに支配された細切れのつぶやきしか書かないため、つぶやきよりも長い文章を書くことに対して自信を持てないのだ。