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読書記録とその他雑記。

呪縛 - 「土地の神話」

土地の神話 (小学館文庫)

土地の神話 (小学館文庫)

「強盗」ともあだ名される五島慶太がどのように東急グループを巨大化させていき、田園都市の理想が日本において変質した理由を紐解いた作品である。田園都市の開発は五島慶太ではなく渋沢栄一の子の渋沢秀雄が主導していたというのが個人的には意外な発見だった。

また藤森照信による解説も興味深かった。「水田に始まり、班田収授、荘園、一所懸命、検地、封土、地租改正、そして農地解放まで、(中略)これほど土地まみれな歴史を持つ国は日本以外にちょっと見当たらない」言われてみれば確かにその通りだ。バブル景気も普天間基地移設問題も土地の問題でもある。そして本書の著者も東電病院という土地を巡る問題によって都知事の職を追われた。日本は今もなお土地が政治を動かしているのだ。