文を敲く

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警句集 - 「灯をともす言葉」

灯をともす言葉

灯をともす言葉

暮しの手帖」の名物編集長の花森安治の文章から抜粋した言葉が収められた本である。しかし、巷にあふれる超訳名言集とは一味違う。豊かになったかわりに何かを失った日本、危うい方向へ行こうとする日本人に対する警鐘の言葉が中心だからだ。ここで一つ挙げてみる。

いま、ぼくたちは、
政治でも経済でも
学問でも、風俗でも、
およそスポーツ精神とは
かけはなれてしまった世の中に
住まわされている。
こんな、どろどろの中から、
美しいオリンピックが
花ひらくわけはない。

これは1964年のオリンピックへの批判だ。しかし2020年のオリンピックへの批判としても通用する。花森安治の文章はアメーバの芸能人ブログのように改行が多いが中身は驚くほど濃厚なのだ。だからこそ没後何年もたっても読み継がれるのだろう。私もこのような文章を書けるようになりたいと何度となく思った。しかし未だに書けずにいる。