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読書記録とその他雑記。

団地とSF - 「燃えつきた地図」

燃えつきた地図 (新潮文庫)

燃えつきた地図 (新潮文庫)

原武史か誰だったかは忘れたが団地はSFの格好の舞台となったと語っていた気がする。SF的魅力のある本書の出発点となるのもまた団地である。その団地の描写がとにかく丁寧だったのがかえって印象に残っている。会話ばかりで風景描写はほとんどされない小説ばかり読むことが多かったからだろうか。

確固たる自分というものを持っていたはずが、いつしか括弧に括られた「自分」とならざるを得ない現代。その現代を生きる手掛かりにはなるかと思ったが、よくよく考えると既に「地図」は燃えてしまっているのだ。手掛かりにはならないが支えになる本だと思う。