文を敲く

読書記録とその他雑記。

奔放 - 「杉浦茂のちょっとタリない名作劇場」

ギャラリークラフトというブログを見てから無性に杉浦茂の作品を読みたくなってきたので、平凡社「太陽」*1の連載を単行本化した本作を読むことにした。全編フルカラーなので漫画というよりはバンドデシネに近いのかもしれない。

学生時代に「太陽」の古いバックナンバーを読み耽っていた頃を思い出す。「太陽」は"monthly de luxe"と銘打った月刊誌だった。直訳すれば「月刊贅沢」である。デラックスという言葉からはいつの間にか贅沢感は剥ぎ取られ、デラックス弁当やマツコ・デラックスのような「大きい」という意味合いで使われることが多くなった気がする。ちなみに「太陽」によく似た雑誌である「サライ*2は"super premium magazine"と銘打っている。プレミアムもそう遠くないうちに高級感とは無縁の言葉になるのかもしれない。高級感を強調した言葉はえてして濫用されて高級感が消えてしまう。「VIP」という言葉もネット上では2ちゃんねるの板の名前以上の意味は無い。

と、本作はこの感想のように本題からの逸脱を繰り返して原作とは全く無関係なストーリーになっていている。

*1:現在は「別冊太陽」のみ発行。特級ウイスキーの広告が多くちょっと不思議な空気が流れていた。今や「特級」というウイスキーは存在しない。庶民の憧れだった洋酒も今はディスカウントストアで売られる時代だ。

*2:病院へのお見舞い用雑誌として結構人気があるという