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読書記録とその他雑記。

知識人の生活と意見 - 「ヘンリ・ライクロフトの私記」

ヘンリ・ライクロフトの私記 (岩波文庫)

ヘンリ・ライクロフトの私記 (岩波文庫)

貧しい三文文士ヘンリ・ライクロフトがひょんなことから年金を得て悠々自適の日々を過ごしながら書き留めたという趣向の作品。ただし著者ギッシングはこのような境遇を遂に得られぬまま病床で亡くなるというのだから驚く。フィクションとは思えない完成度なのである。

イギリス田園地帯の四季の移り変わりの記述は書き写したくなるほど美しい。あとで書き写しておくつもりだ。

ただし、読書が大好きで大衆が嫌いという典型的知識人の私記なので読む人を結構選ぶ気がする。私はこの知識人の生活スタイルに憧れを感じ、共感さえも覚えるところもあった。「健全な肉体に健全な精神が宿る」という格言に煩悶する人なら共感を持って読めると思う。またいつか読みたい。