文を敲く

読書記録とその他雑記。

驚き -「トマト缶の黒い真実」

スーパーマーケットや輸入食料品店に山積みにして売られることが多いトマト缶。手頃な価格なのでこれまで何度か買ったことがあるが、本書はこの「手ごろな価格」のカラクリを詳らかにしたノンフィクションである。トマト缶がまさかここまで国際分業で作られているとは思わなかったので驚きの連続であった。もう以前とは同じような感覚でトマト缶を買うことはできなくなる。

「トマト缶」という一見すると地味な題材にもかかわらず、本書は異様なまでにスリリングな出来となっている。著者の取材力と構成力に感嘆するのみであった。

「さいはての中国」

ここしばらく中国への関心興味が尽きないため、中国関係の書籍を読む頻度が増えている。前回は歴史書だったが、本書は中国の知られざる現在を取材したノンフィクションである。連載が行われていたというSAPIOといえば勇ましい文言が並びがちなイメージがあるが、本書はその手の文言は極力避けて書かれていたので私にとっては読みやすかった*1

中国国内にアフリカ人街ができているという話は本書で初めて知った。「世界の工場」ゆえ当然のことであるが、その定着度合いに驚きがあった。

*1:とはいえ本の帯には「行ってはいけない」などと書かれていたりするので掲載雑誌のカラーに少なからず引きずられているとも思う。

「中国史」

国史という大河を東洋学の泰斗が悠々と叙述した通史である。古代から現代までの大枠をとらえるには最適だと思われる。

ときどき「処理」の変換ミスで「胥吏」という言葉が出てくるが本書によってその指し示すもののイメージをようやくつかむことができた。かつての王朝では末端の官吏は請負だったらしい。ある種の「小さな政府」ではあるがそれが賄賂の横行につながった訳でもある。読んでいるうちにいろいろ連想が深まった。