文を敲く

読書記録とその他雑記。

ふしぎなキリスト教徒 - 「ぼくはどのようにしてキリスト教徒になったか」

「余は如何にして基督教徒となりしか」の現代語訳である。原著が英語で書かれたことは遅まきながら本書の解説にて初めて知った。定評ある新訳シリーズだけあって読みやすい。おそらく原著もそこまで凝った文章ではなかったはずだ。

内村鑑三キリスト教徒となったが、アメリカではキリスト教各派の差異に右往左往する。橋爪大三郎が本書に寄せた解説で手厳しく批判していた点が印象に残った。

金融政策 -「大坂堂島米市場」

世界史上もっとも早い時期に誕生した先物市場である大坂堂島米市場について記した本である。先物市場の誕生経緯や取引の内容が詳しく紹介されているだけではなく「先物市場に対して幕府はどのように向き合ってきたか」という渋いテーマについても史料を駆使して鮮やかに描き出されていることが本書の特色である。

江戸幕府の金融政策は小判の改鋳以外はあまりうまくいっていないイメージが強かったが、先物市場に対する政策はそれなりに機能しており、認識を新たにさせられた。「日本銀行前総裁 絶賛」とオビで謳うだけの魅力があり、個人的な「今年の収穫ベスト3」に挙げたい。

写真 -「残念和食にもワケがある」

最近ではあまり話題*1にならなくなった日本の食卓事情の変化を、著者が長年行ってきた調査を基に分析した本である。目次だけでも「給食で初めて煮物を食べる子どもたち」「お子様用プレートで食べる大人たち」などなかなかのインパクトがある。

目次以上に強烈な印象を与えるのが本書に収められた写真だ。そのほとんどがシズル感ゼロである。「著者が指定したレンズ付きフィルム」で撮られたものだからだと思われる。普段目にする「食卓」の写真は意識的もしくは無意識に加工された写真ばかりであると強く意識させられた。

*1:10年以上前には「個食」「孤食」「食育」など新語と共に食卓の変化が議題として何かと浮上していたように思われる